大学院生?修了生の声

肥田 伊織 日本文学研究科修士課程修了/尾道市役所文化振興課市史編さん委員会事務局

私は2014年に、本学学部日本文学科を卒業して本大学院日本文学研究科へ進学しました。学部2年生のゼミ選択時から伝承文化を扱う藤井佐美教授のゼミに所属し、文献調査や現地調査(フィールドワーク)の方法を学びました。

大学院では、愛媛県松山市興居島を中心とする河野氏の始祖伝承について調査をおこないました。授業の合間に愛媛県内の図書館や公民館、神社等をめぐって文献資料を収集し、地域の皆さんにお話しを聞かせていただいたり、案内をしていただきながら現地調査を進めていきました。


瀬戸田町の名荷神楽を見学した時の様子
(民俗部会)

因島中庄町の青陰山城跡から見た風景
(考古部会)

このような、修士論文を書くために不可欠である文献調査と現地調査の方法は、藤井ゼミで行われていた伝承文化研究会(伝文研と呼ばれていました)の中でも学ぶことができました。特に現地調査の方法は実践形式で先輩方と共に地域を歩きながら教えていただきました。参加当初に経験した本学が位置する久山田の調査は、右も左も分からない中で、文献調査?現地調査にはじまり共同論文執筆、調査内容の口頭発表?資料展示までを体験させていただきました。大学院の時には絵巻『道成寺縁起』の読み会をおこないました。その内容は、当時尾道本通り商店街に位置していたサテライトスタジオに展示させていただき、市民の皆さんにも見ていただくことができました。学部の時に学芸員資格を取得していたので、勉強していたことを実践することができる貴重な機会となりました。

大学院修了後は尾道市役所 文化振興課 市史編さん委員会事務局に勤務しています。市史とは、自治体がまとめた地域の歴史書のことで、県や町の単位で編さんがおこなわれれば、県史、町史と呼ばれます。平成30年に市制施行120周年を迎えた同市は明升体育国际_明升体育线上_明升体育官方备用10年までの間に『新尾道市史』の発行を計画しており、現在までに「文化財編 上巻」と「資料編 近世」を刊行しています。本学附属図書館や尾道市内の図書館にも所蔵されていますのでお手に取ってみてください。

市史は古代、中世、近世、近代、現代、地理、民俗、文化財、考古の9部会に所属する先生方に執筆していただきます。同事務局は執筆いただくための準備として、主に資料の収集、整理(目録の作成等)、保存、現地調査への同行をおこないます。提出された原稿は、執筆者と同事務局で約1年をかけて校正をおこない、発刊します。


 資料撮影の様子

 資料整理の様子

市史を編さんするのと同時進行で、収集した資料の活用(展示等への資料提供)、年2回発行する広報誌「市史広報」の編集、収集した資料の展示を不定期でおこなっています(「市史広報」は当市ホームページでご覧いただけます)。このような活動によって、市民の皆さまに当市の歴史や文化を知っていただき、郷土への理解が深まるきっかけとなればうれしいです。 学生の時には対象地域のことを知るために参考としていた市史ですが、同事務局で働くことで、市史がどのように作られているのかを知ることができとても興味深いです。そして、大学院で学んだことが仕事内容に直結している部分もあり、進学して色々なことを経験させていただけて本当によかったと思っています。